少子化の正体

「80・2.0の壁」とは?

扶養力の低下2

恋愛弱者の青年たち もう一度、先の図表を確認してみましょう。やはり目に付くのは、単独世帯の増加と、それによって圧縮されているかのような「その他の世帯」の減少です。この「その他の世帯」には、成人した子どもと親や、老いた親を在宅介護している世帯…

扶養力の低下

減り続ける「世帯人員」 出生率の低下が社会問題になり、少子化対策が国政でも議論されていますが、生まれたとして、子育ての基本的な単位である家庭の養育力が脆弱です。それは単に養育費用の問題だけではなく、家庭内人手不足なのです。 ところで「一家離…

ベビーブームの背景

平均寿命と出生数は負の相関(反比例関係)にありますから、平均寿命が短縮すれば出生数が回復する要因になります。ただし、生活資源が回復することが前提条件になります。歴史的に各国で散見されたベビーブームの背景には、これら平均寿命の短縮と、生活資源…

超過死亡率を上げる要因

自殺・殺人・戦争 日本では、気候変動による飢餓を解消し、不可抗力の自然災害による被害を最小化する取り組みも続けられています。具体的な数値をみてみましょう。日本の国土面積は世界の0.29%で人口は2%以下です。しかし、地球上の活火山の7.1%が日本に…

超過死亡率と過小死亡率の危うい均衡

超過死亡率とは何か。 成人であれば、性別と年令で、これから1年間の生存率が統計的に計算されています。それをもとに、次年の死亡数や年令ごとの平均余命が予測されています。日常生活に関連した身近なところでは、生命保険料が計算されているわけです。日…

奴隷制度を持ったことがない日本文明

奴隷なしにはローマは成らず。 日本は人口が減少して労働力が不足しているのだから、もっと移民を受け入れるべきである、という論調が強くなっている一方では、次世代に禍根を残すから、慎重に考えるべきであるとする論も多くあります。しかし、なし崩的に外…

急がば廻れの少子化対策

「急がば廻れ」とは、周知のように「急ぐときは、近道や危険な方法を選ばずに、むしろ回り道でも、確実で安全な道を通ったほうが、結局は早く着ける。」という意味です。だれでも、知っている諺ですが、つい近道を探してしまいがちです。少子化対策も近道論…

人口減少時代になぜ戦争? (2/2)

生存闘争は、異種間よりも同種間の方が激しい。同じ所に棲み、同じ物を求めているからだ。チャールズ・ダーウィン(種の起源より) 前回からの続きです。さてスーダンとニジェールで内乱が起きています。2年前にはマリでクーデターが起きました。これらの動乱…

人口減少時代になぜ戦争? (1/2)

人口増加は騒乱のもと 新型コロナ騒動がひとまず落ち着くと同時に、ウクライナ戦争が勃発しました。 この戦いにも関心が薄れ出したころに、パレスチナ紛争が勃発しました。この地域では過去20年ほどの間にも、何回かの衝突はありましたが、日本での報道は…

「国土の均衡ある発展」は、打ち上げ花火だった。

都市の向かうのは人間の習性? 1960年代にはすでに顕著になった都市の過密化と地方部の過疎化の対策として、「均衡ある発展」というスローガンが掲げられました。70年代には「日本列島改造論」が話題として沸騰しました。日本各地を高速道路と新幹線で結べば…

ますます鮮明になる人口過密地帯と過疎地のコントラスト

「東京に来ないで下さい」 「毎日300万人が東京との往来があります。エッセルシャルワーカー以外は、東京に来ないでください。」 これは、2021年の新型コロナパンデミック時の小池都知事の発言です。大きく報道されましたから、記憶に残っている方も多いでし…

年金不安が少子化に油を注ぐ

世代間扶養の破綻 身近な人たちと雑談している中で、年金の話題になりますと、受給世代は「年金だけでは、とても暮らしていけない。」と言い、若者は「私たちは,もらえないんでしょう。」と一様に話します。若者たちは、毎月の少ない給与支給額から、税と合…

あれから40年後の「サザエさん一家」

磯野家にも年波は押し寄せる。 「サザエさん」原作から今日までは、すでに60年以上経過していますが、それですと波平とフネは鬼籍に入り気の毒ですから、40年経過して、一家は今も、そのままあの家にいると仮定しましょう。さて、あの人は今を想像してみます…

「サザエさん一家」のお得な暮らし

1人では食えないが、2人なら食える。 少子化問題と老後問題の根は同じで、まずは生涯所得が生涯支出に追いついていないことです。これが「老後2000万円問題」として、ひと騒動になりましたし、国としては「投資しましょう。」と、すでに60年代に言われた「…

生涯所得<生涯支出

生涯の前半と後半は世代間扶養 「人生100年時代」というのは、まだ少し大げさでしょう。「人生100年」は資産運用の枕言葉で、書いているのはたいてい証券会社か銀行あるいは、年金給付を先延ばししたい年金機構の広告と思ってまちがいないでしょう。 とはい…

環境収容力という制約

動物でも、寿命が長くなれば出生率は下がる。 先に動物たちの寿命と出生率を見てみましょう。動物たちの出生率は寿命と負の相関を示しています。単純化した表現では反比例しているのです。例えば家に棲むクマネズミは、寿命3年程度で、同時に4-5匹の仔を一年…

なぜ化石燃料は 人口爆発を起こしたのか。

大型動物ほど、寿命が長い。 動物の寿命は、単純な正比例ではありませんが、体重に相関する傾向を持っています。たとえばシカやウシ・ウマよりもゾウが長く生きます。地上で最も長生きする哺乳類はゾウで、寿命は70年を超えると言われています。 また体重に…

化石燃料が人口爆発を引き起こす。

スモッグの中で子どもは生まれる? 日本の人口動態を歴史的に振り返りますと、関ヶ原の合戦(1600年)の頃には、1千万人程度であったと推計されている人口は、おおよそ300年後の1872年(明治5年)には、3480万人になっていました。300年で3倍になったのです。 …

80・2.0の壁とは

下図は世界の181の国と地域の平均寿命と出生率の関係を見たものです。「強い負の相関関係(相関係数=-0.81891)」がみられます。いうなれば平均寿命と出生率は反比例するのです。つまり平均寿命が長くなれば、出生率は下がるということです。 平均寿命:WH…

外国人労働者の受け入れは、「お得」なのか?

見逃されている費用 外国人労働者の呼び込みは、労働市場の開放や技能移転による国際貢献など、美しい言葉がならびますが、本音は低賃金労働者の穴埋めです。これは受け入れ側の先進国に共通で、日本に限ったことではありません。大学職員をはじめとする研究…

近隣諸国に、労働者を送り出す余力はもうない。

アジア全域で、少子化が進行中 人口動態の変数は、周知のとおり出生数・寿命・移動の3つです。先進国共通に出生率の減少と人口減少に悩まされているわけですが、それなら出生数の回復策よりも、移民の受け入れが手っ取り早いのでは、ということになります。 …

少子化対策は生活第一主義?  フランスとスウェーデンの場合

表題の2カ国の出生率も2.0を切っていますが、先進国では比較的に高いレベルにあります。そこで、日本では少子化対策のヒントをこれらの国々の政策の中に探そうとします。しかしながら、「傾向と対策」というような、短絡的な考え方では、立ち行かないかでし…

有効な少子化対策はあるか?

2023年4月に、財源は後回しで「子ども家庭庁」が発足しました。「子」作りより、「庁」作りが目的ではないかのかというデジャブ―感がありますが、一方には大真面目に少子化対策に取り組んできた国々も多くあります。 やはり陸続きの国々では、自国民の減少は…

引きこもり族の増加

人生ゲームよりビデオゲーム? 90年代も後半に入りますと、金融機関の統廃合もあいつぎ、就職氷河期も一時的ではないことがはっきりしました。いつの時代でも、いろいろな社会問題が発生しますが、そのなかで、少子化問題も喫緊の課題であるといわれてはいま…

ベビーブーム世代の悲劇―親はリストラ・子は氷河

90年代は生産性に富む人口構成だったのに、なぜデフレ 昨年(2022年)の出生数が80万人を割り込んだことから、経済が浮上しない・社会が瓦解するなど、産めよ増やせよの世論が喚起されています。また、かねてより「失われた30年」あるいは「デフレの30年」の原…

バブル景気で少子化が止まらなかったのはなぜか?

1.57ショック - あれから毎年が「ひのえうま」 戦後2回のベビーブームの背景が、戦後復興景気や高度経済成長など経済の拡大なら、バブル景気(1986-91)で、それまでの少子化の流れが、一時的にせよ反転したのか。当然、そうした疑問が出てきます。バブル景気…

第2次ベビーブームの背景は高度経済成長(2/2)

多幸感の絶頂だった大阪万国博覧会「EXPO’70」 経済高度成長を促したのも、戦後復興経済と同じく、官民一体型の統制経済でした。まずは金融です。戦後の傾斜生産方式に名を借りるならば、傾斜金融方式ともいえる財政投融資です。 まず郵便預金で家計の…

第2次ベビーブームの背景は高度経済成長(1/2)

1960年(昭和35年)代から増加に転じた出生数 ここで戦後の年間総出生数と、一人の女性が一生の間に産む子どもの数を表す合計特殊出生率(以降は単に「出生率」と表記)の戦後推移を見てみましょう。 内閣府HPから引用 グラフが1947年からスタートしているの…

第1次ベビーブームの背景は戦後復興経済

無傷で残った戦時経済体制 戦後2回のベビーブームの要因を、まず第一次ブームから「鳥の目」で眺めてみましょう。(当時のマクロ経済に関することがらは、「戦後経済史(7)」から引用します。) グラウンド・ゼロからの復興愛は生きていた? 戦後、GHQによ…

戦後2回のベビーブームでわかる出生数増加の要因

迷路に入った少子化議論 政府として深刻な問題としてとらえているのか、または生活苦を訴える世論への迎合か、はたまた異次元の増税への布石なのか、少子化問題が急に遡上しています。 それに対して、専門家や文化人がそれぞれの思い付きの考えを、ネット上…